特集 | 2016.2月号

アステン特集

冬の珈琲は、陽だまりで

冬、温かいコーヒーを一番おいしく飲む方法は? そう、外で飲むこと!よく晴れた日は「外珈琲」がとりわけ楽しい。愛用のカップを持って、猫たちみたいに陽だまりを見つけて。

外だからこそ淹れたてが飲みたい

 「外で飲むコーヒーはおいしい」と、アウトドア派の人は誰もが口をそろえる。特別アウトドアな趣味を持っていなくても、おいしいコーヒーは飲んでみたい。そこで、いつも外珈琲を楽しんでいるグループに混ぜてもらうことにした。
 ママ友同士という千葉さんと神尾さん、土肥さんは、家族ぐるみでバーベキューやキャンプを楽しむ仲。寒い冬こそ、自然の中でお湯を沸かして温かいコーヒーを淹れるのが彼女たちのぜいたくだ。「気持ちのいい外の空気に触れながら飲む淹れたてのコーヒーは最高なんです」と神尾さんは言う。
 家ではコーヒーメーカーを使う土肥さんも、外ではミルを持ち出して豆をひくところから始める。「うちの子も、ミルを回すのが楽しいみたいなんです」。この日の豆は富山のお店のもの。豆にもこだわりが、と思いきや「外で飲めばどんな豆でもおいしく感じます」。ミルから漏れ出るいい香りに皆が集まる。作る過程も、外では楽しみのうちだ。
 家のキッチンから持ち寄った愛用の道具は、どれも外の景色に映えておしゃれ。泊まりのキャンプではアウトドア専用の食器も使うけれど、この日はもう少し気分を出して陶器のマグカップで。思い思いのカップがカラフルで楽しい。お湯でカップを温めておき、挽きたての豆にお湯を丁寧に注ぐと、お待ちかねの幸せな時間がやってくる。「土肥さんが淹れるコーヒーはおいしいよね」と、千葉さんたち、笑顔だ。
 アクティブに非日常に出かけていくというよりは、青空の下にお気に入りのコーヒータイムをそのまま持ち出したようなひとときだった。

浅煎りに深煎り、外珈琲は自由に

 外珈琲を思い立ったら、まずは好みのコーヒー豆を見つけたい。ここ最近コーヒー業界は「サードウェーブ」といわれ、個性的なショップが次々と登場し、手に入る豆も格段に豊富になっている。「豆全体の品質も上がってきているので、その持ち味をより生かそうという店が増えています」と話すのは、葉山珈琲io*ri(いおり)静岡店で豆の焙煎に携わってきた河渡太一さん。「いま浅めの焙煎が多く見られるのは、そのコーヒーが育った土地の個性をより感じやすいからです」
 河渡さんが自分のためにコーヒーを作る時は、豆の個性が全部出るコーヒープレスで淹れるのがお気に入りだそう。「豆選びも淹れ方も絶対的なものではなくて、自分の好みを見つけるのも、気分で選ぶのも楽しいです。豆を扱うお店の人に相談すれば、知らなかった香りや味がきっと見つかりますよ」
 まず一度淹れてみて、香りや味にパンチが欲しければ豆を直接お湯に浸すコーヒープレスに、すっきり淹れたかったらペーパードリップにすればいい。ひき加減も、豆の良い味わいだけをさっぱりと楽しむなら粗びき、濃く味わいたい時は細かめに。苦いと感じる時はいつもより湯温を落ち着かせて淹れるとよりまろやか。淹れ方にひと工夫すれば、より自分好みに近づく。
 外珈琲向けの道具も進歩している。携帯用に作られたミルは家で使う大きなものよりむしろ使いやすいし、小さくたためるバネのような形のドリッパーは豆全体に空気が回ってすっきりと淹れられる。登山・アウトドア用品の専門店、好日山荘静岡PARCO店の宮田伊織さんが「お湯は鍋よりも注ぎ口のあるケトルで沸かす方が注ぐ量をうまく調整できます」と教えてくれた。
 「景色のいい山の上で飲むコーヒーは格別です。ただ冬だと体が冷えやすいので、高山の登山で作って楽しむのは難しい。行くなら低山で」と宮田さん。静岡近郊だと、浜石岳や梶原山、満観峰、ダイラボウなど、見晴らしも日当たりも良い山がうってつけだ。

外でなら、焙煎も自分で

 自家焙煎珈琲豆の専門店、鳥仙珈琲には、その名も「ヒュッテブレンド」という豆がある。ヒュッテはドイツ語で「山小屋」。山好きなご主人の田中素広さんが山好きなお客さんのために作った豆だ。香りや甘味が豊かでホッとする味わい。「山で飲む時は、油分のある月餅やチョコレートと一緒に味わうと疲れがとれるんですよ。キャンプではミルクやブランデーを入れると温まります」と奥さまの逸子さんも言う。
 「外でコーヒーを淹れるなら、自分で豆を焙煎するのも面白いですよ」と素広さん。「どんな煎り方をしても、煎りたては本当においしいです。生の豆は問屋さんなどで手に入りますし、銀杏用の煎り網で煎ると20分くらいでできますよ」。お店で新しい豆を試す時も、カセットコンロの直火と網を使って煎ってみるそう。
 やり方は簡単。150gほどの豆を煎り網に入れてふたをし、強火の遠火にかけてひたすら振る。「実は、室内で煎ると焼けた皮が舞って部屋中汚れるので、外が最適なんです」と笑う素広さんの手元で、確かに豆の皮がひらひら舞い始めた。火の上で豆を転がし続けるうちに、ぱちぱち弾ける音が。「この音がした辺りから浅煎りコーヒーとして飲めるようになります」。時間をかけるほど深煎りに。そのさじ加減も自分の思いのままだ。
 「機械で熱風焙煎した豆は時間を置いた方がいいけれど、直火で煎った豆は煎りたてが一番おいしいんです」と素広さん。できあがったコーヒーはまさに、煎りたて・ひきたて・淹れたて! おしゃべりしながら試し煎りしたものとは思えないほど、味わい鮮やかでおいしい。
 またあの味に会いたくて、煎り網を探し始めた。