特集 | 2017.8月号

アステン特集

眠ろう、明日のために。

寝る間も惜しんで頑張ることが最高の「頑張る」ではないって、私たちのカラダはよく知っている。熱帯夜を越えて深く眠ろう、朝顔みたいにすっきりと目覚めるために。

私の睡眠、足りている?

 「睡眠ってもったいない時間だとばかり思っていました。将来を見据えて頑張るためには睡眠時間を削ってでも活動することが有効だと思っていたので。当時の睡眠時間は3〜4時間でしたね」と友野なおさんは話す。今では睡眠コンサルタントとしてさまざまなメディアで活躍している友野さんだが、その裏には苦い経験があった。
 20代の終わり、パニック障害に苦しみ、急激に太るなど体調も生活も乱れ、「出口のないトンネルの中にいるような」焦りの毎日が続いた。寝る間も惜しんで出口を探し、疲れ果てていたある日、「母が何気なく『全部忘れて寝たら』と言ったんです。自分でも万策尽きて、諦めの心境でした。夜12時に寝て朝7時に起きることをただ繰り返したんです。すると徐々に、アトピーもパニック発作も異常な食欲も自然と整っていきました。気持ちもどんどん前向きになって、さまざまなことに意欲的になっていったんです。体重も15kg減りました」
 睡眠が自分を後押ししてくれることに気付いた友野さんは、試行錯誤してベストな眠りを追求してきた。そのノウハウを著書や講演で多くの人に伝えている。
 「厚労省の調査では睡眠時間が6時間未満という人が多いようですが、睡眠時間が短い人は得てして睡眠の質も良くない傾向がありますね。日本の女性、中でも40〜50代は、世界で一番睡眠不足というデータもあります」
 確かに、忙しい私たちにとって睡眠は毎日の活動の「余り時間」のようになりがち。質の良い睡眠とはどんなものかも正直よく分からない。「よく、22時から2時までが睡眠のゴールデンタイムだとか、一日8時間睡眠が必要といった話を聞きますが、理想の睡眠には個人差があるんですよ」と友野さん。自分の睡眠が足りているかどうかは、次の5項目でチェックできるという。「朝すっきり起きられない」「朝、排便がない」「朝食を食べていない」「午前中、電車移動や会議などで眠気が来る」「休日は平日より2時間以上寝坊する」。当てはまるものが三つ以上あると、睡眠の量が足りないか、質が悪い可能性があるのだとか。

なぜ眠れないのか

 漢方の専門家、熊猫堂薬局の戸塚和典さんは、自身も不眠に悩んだ経験の持ち主。「漢方薬にも睡眠のための薬はありますが、これがなかなかすぐには効かない。それで続けられなくなる人が多いんです。どうしたらいいのか自分なりに睡眠を研究してきました」
 戸塚さんの話によれば、「人の睡眠には波があって、浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠を何度か繰り返して目覚めます。浅い眠りの時間には脳の一部が働いて体の修復の必要な場所を探知し、深い眠りの時間に修復する。両方大事な役割があるんですね。この深い眠りが十分に深くないと、睡眠時間が長くてもだるさが残るし、浅い眠りが浅すぎれば途中で起きてしまいます。このような睡眠の波が十分整うのが質に良い眠りといえますね。ある種の睡眠導入剤を服用すると、強制的に眠れても、レム睡眠が奪われて睡眠の質を低下させることもあります」。
 静岡市の鍼灸院「六番町ぬちぐすい」の篠崎由貴子さんは「眠れないことを相談に来る方はあまりいないのに、話を聞いてみるとあまり眠れていない人、薬の力を借りている人が驚くほど多いです」と話す。
 「東洋医学では、日中目覚めている時の体には陽の気が巡り、反対に夜静かに休む時間は陰の気が巡ると考えられています。イライラやストレスで眠れないという時は、昼間の陽の気が強すぎて治まっていないんです。逆に、陰の気が弱すぎても、朝早く起きてしまって昼間も眠いといったことが起こります。夏場、冷たいものを食べすぎたりして胃腸の働きが弱まっている人は、陰の気が弱まっていることが多いですね。そういう陰陽のバランスを整えることが大切」
 体のバランスが整えば睡眠の質が整い、睡眠が整えば体はさらに整う。その良い循環をつくるにはやはり日々の健康習慣がものを言う。「ありきたりな答えかもしれませんが、夏バテしない体づくりが質の良い睡眠にもつながります」

眠りのスイッチをオンにする

 では、質の良い睡眠に近づくには、実際どうしたらいいのだろう? 戸塚さんが指摘したのは、夕食のタイミング。「仕事を終えて夜遅くに帰って夕食をとってすぐ寝ると、消化が終わるまで体は休めない。心臓にも負担がかかります。できれば仕事が忙しい時も夕方5時半くらいにおにぎりをつまむなどして、寝る3時間前には夕食を食べ終わるのが理想的ですね。」
 また、眠る環境を整えるのもポイント。とりわけ夏の湿気は快眠の敵だ。「部屋干しの洗濯物や水槽などは置かない方がいいでしょう。枕や寝具は、十分寝返りが打てるものを。夜寝た時のままの姿勢で起きるようでは疲れが取れません」
 睡眠コンサルタントの友野さんは「入眠儀式」の習慣づけを勧める。  「私はパジャマに着替えると眠りのスイッチが入るというのが習慣になっています。何でもいいから、イチロー選手のフォームのように、決まったことを繰り返すのが大事」。もう一つの対策は、光のコントロール。「眠る前せめて30分はスマホを見ない、ベッドまで持って行かないこと。これが習慣づけば、自分もまだまだ熟睡できるんだと体感できるはずですよ。朝は、起きたら窓から空を見て、目の中に光を取り入れる。そうするとセロトニンというホルモンが心身を活発にしてくれるだけでなく、14〜16時間後に眠くなるという体内の予約スイッチが働いて、自然と睡眠の良いサイクルができます」
 鍼灸師の篠崎さんが勧めるのは、眠る前のリラックス。「体に熱がこもると眠れないので、じわっと汗をかくくらいのぬるめのお湯に入れば、血の巡りも良くなって熱も発散できます。その意味では軽いストレッチも有効ですが、筋肉の使いすぎは逆効果。自分がリラックスできる手段をいくつか経験で知っておくといいですね」。実は戸塚さんのリラックス法もお風呂。「40℃以上のお湯は体が興奮するので、36〜37℃のお湯がベスト。熱いお風呂が好きな人は最初と最後だけにしておきましょう」。リラックスを促すお茶や漢方薬もあるとか。自分の睡眠スイッチを見つけて、ぐっすり眠ろう、明日のために。

取材・撮影協力 / 玉村絵里さん 
漢方の熊猫堂薬局 http://www.kumanekodo.com 
鍼灸・指圧 六番町ぬちぐすい http://www.ncgsi.com

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