特集 | 2021.3月号

アステン特集

風の時代の働き方

決まった形にとらわれない働き方ができる時代へ、風向きが大きく変化してきている。新しい風に乗る人は、今どこを目指す?

「ありがとう」が感じられる方へ

 SBSテレビ「ORANGE」で月曜日のコメンテーターを務める阪口瀬理奈さんは、IT人材育成に関する研究職。東京にいた頃は国内有数のシンクタンクで国の施策に関わる調査研究に取り組んでいた。重要な職務ではあったけれど、「スケールが大き過ぎて、自分の作った資料が必要なところに届いているのかも分からない。もやもやして先が見えなかったんです」。このまま一生この仕事と東京に縛られる気はなかった。
 30歳になった3年前に退職。家賃の高い都内に住む必要もなくなった。「東京に1時間で行き来できて雪が降らない街で暮らしたい。そう思ったら静岡一択でした」。静岡には先に移住している旧友もいた。街には生活に必要なものが身近にそろっている上、30分で豊かな自然に手が届く。大好きな自然や生き物、カメラや登山を「海外から来た留学生みたいに」楽しみ尽くす毎日。
 しばらくは遊んでいればいいと思っていたが、幸運にも仕事はすぐに見つかった。今では静岡県産業振興財団の委託を受けてICT人材育成支援に取り組む一方、静岡経済研究所の主任調査研究員としても活動している。一つの職場に縛られることなく、自宅や公園やお気に入りの喫茶店でテレワークする自由もある。
 仕事内容は以前とそう変わらないが、相手先は変わった。「顔の見える事業者さんから直接『ありがとう』と言っていただけるようになったのが、とてもうれしいんです。正しい情報を提供してお役に立ちたい。自由な時間を使ってもっと勉強して、『ありがとう』を胸張って受け止められる自分になりたいという気持ちが湧いています」
 東京にいた彼も、昨年ほぼ在宅勤務になったのを機に静岡へ。昨秋結婚し、2人それぞれにやりたい仕事を続ける。今はそんなこともできる時代だ。

心がワクワクする方へ

 静岡ガスのキャラクター「ぽかぽかものはし」やアピタ島田専門店会の「しまアピル」を生み出してきた20代グラフィックデザイナー、あさおかまりあさんは、4年半活躍した広告会社を昨年巣立った。「中華料理店を営む父が『嫌という理由で辞めると引きずるよ』とよく言うんです。自分がワクワクする方へ向かっていくならいい変わり方ができるって」
 あさおかさんのワクワクが向いた先は、静岡市のチョコレート専門店Conche。以前から大好きだった店だ。ある時、店内で描いていた趣味の絵日記に、たまたま店主の田中克典さんが目を留めたのが縁の始まり。新しい店の壁に絵を描かないかと声を掛けられ、打ち合わせを重ねるうちに、お店でやりたいことがどんどん膨らんでいった。田中さんから今後も一緒に仕事しないかと誘われた時、これは運命と即答した。
 前の広告会社も大好きだったけれど、「私がやりたいのはただ広告を作ることじゃなくて『いいものをお伝えして喜んでいただく』ことだったんです。広告は見る側に歓迎されないことも多いけれど、新しい商品を作ればみんなに喜んでもらえる。そう考えたら、面白そうという気持ちが勝ちました」
 Concheでは商品パッケージなどのデザインを手掛ける一方、接客販売もする。いずれ他企業とのコラボ商品の開発にも挑戦するつもりだ。ただ、常勤スタッフにはならなかった。ここでの仕事をベースに、デザイナーとして他の企業の仕事でも経験を積みたいと、転職前に交渉したのだ。次のワクワクを、あさおかさんは自力で引き寄せ始めている。

支え合う仲間がいる方へ

 会社の中で自分らしい働き方をかなえる人もいる。
 静岡・山梨に「心美体コンディショニングサロンLAGE」などを展開している女性イキイキカンパニーは、「女性が一生輝いて働ける会社」を理念とする、働き方改革の先駆的企業だ。ライフステージが多様に変化する女性のために、あえて型通りの雇用体制をつくらず、一人一人の働き方と向き合うオーダーメイド雇用を実践している。社員自身が夢を持って働くことでお客さまを輝かせ、一生通えるサロンを目指すという。
 20代のセラピスト、小野楓さんは、その社風に引かれてLAGEに入った一人。自分の手で直接誰かを幸せにする仕事がしたかった。ただ当初は、店で技術を磨いたら独立するものだと思っていた。「お店にいても周囲と競い合うばかりで自分のやりたいようにはできないと思い込んでいたんです。でもこの会社と出合って、仲間と一緒に働く楽しさを知りました」
 個人でお客さまを抱えるエステサロンと違い、LAGEでは一人のセラピストが受け持つお客さまをチーム全員でフォローする。最近出産したばかりの小野さんが時短勤務をしてもお客さまに不便をかけないし、力を合わせるチームには自然と和やかな雰囲気が生まれる。
 仲間に支えられ、会社が運営する保育園の助けも借りながら、小野さんは子育てと仕事の両立を目指す。働くお母さんの気持ちも分かるようになった。「コロナ禍で職を失う非正規雇用の女性や、ステイホーム中の子育ての負担に黙って耐えているお母さんたちを見ていると、女性はまだまだ弱い立場だと感じます。女性がもっと強く輝いて世の中に自分を発信できるようになるといい。そのお手伝いをこの会社でしたいと思っています」。一人では大きすぎる夢も、仲間となら追っていける。

取材・撮影協力 / Conche TEL.054-293-4910 女性イキイキカンパニー TEL.054-245-5055 中国飲茶館 TEL.054-284-4190

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