特集 | 2020.8月号

アステン特集

冷凍庫のエトセトラ

おうちの中の、マイナス18度の小さな世界「冷凍庫」。なんとなく使ってきた引き出しの中には、知らないエトセトラがたくさん詰まっていた。

まずはトリセツを熟読すべし

 キッチンにどんと構え、暮らしを支える冷蔵庫。とりわけ冷凍庫は食卓の救世主。新型コロナウイルスの感染拡大防止のための自粛期間中は冷凍食品が飛ぶように売れたことも記憶に新しい。果たして正しく使えているのだろうか。
 「冷凍室は温度を保つためにたくさん詰め込んでおいた方がいいです。逆に冷蔵室は冷風を通すので詰め込まないで」と教えてくれたのは、三菱電機静岡製作所(静岡市駿河区)の冷蔵庫営業課、徳山晴基さんと開発を担当する鈴木和貴さん。実は450リットル以上の三菱の冷蔵庫はMade in 静岡。開発から製造まで静岡製作所で担っている。担当者らは「使い始めに取扱説明書を読むのがお勧め」という。「便利に使っていただけるように、いろんな機能を付けています」。家電の冷凍機能は驚くほど進歩している。簡単なボタン操作で低温解凍できたり、野菜をおいしく冷凍できたり、各メーカーがしのぎを削る。使いこなさなくては宝の持ち腐れだ。「例えば取扱説明書にも書いてありますけど、製氷機の給水タンクなどは定期的にお手入れしてくださいね。水あかやぬめりの発生を防ぐことができますよ」。暮らしの何気ないルーティンも、見直す必要がありそうだ。
 家庭用の冷凍庫はマイナス18度程度。熱い食品を入れるのはご法度だ。例外機種もあるが「他の食材が溶けて保存品質の劣化につながります」と徳山さん。また、肉や魚をトレーごと冷凍庫へ入れるのは、あまり勧められないという。トレー内の空間は、食材が冷えにくくなり、霜付きや冷凍焼けの原因にもなる。ラップかジッパー付きビニール袋に小分けし、薄く伸ばして空気を抜いて凍らせる、が正解。金属トレーの上に乗せるとよりスピーディーに。「通常の冷凍であれば、凍結までの時間を短くすることが大事です」と鈴木さんは言う。

冷凍を科学せよ

 なぜ冷凍はスピードが求められるのか。科学の観点から学ぶため、静岡県立大学食品栄養科学部の市川陽子教授を訪ねた。「時間をかけて凍結すると、食品中にできる氷の粒が大きくなり、細胞がダメージを受けます。解凍した時に氷の粒が溶けて、水分と一緒に栄養やうま味も流れ出てしまいます」。急速冷凍すると氷の粒は小さく、ダメージも軽減できる。
 冷凍には0度からマイナス5度の魔の温度帯「最大氷結晶生成温度帯」が存在する。0度までは順調に温度が降下するが、急に停滞する。この温度帯を少しでも速く通過させることが"急速"につながる。そのためにラップなどで薄く平らにし、金属トレーに乗せる方法が推奨される。
 不向きの食材もある。水分が多いほど氷になる部分が増えるため、解凍後のダメージは大きい。肉の水分は20~60%程度、野菜は90%以上。肉は生で冷凍できるが、ほとんどの生野菜は適さない。「野菜を生のまま冷凍すると味やテクスチャーが大きく変わり、特にシャキシャキ感は失われます。衛生面も心配です。野菜を冷凍したい場合は、ブランチングしてから小分けにして急速冷凍してくださいね」
 ブランチングとは、冷凍するためにさっとゆでること。色やにおいの変化を防ぎ、殺菌効果も得られる。冷凍は冷蔵と比べ、ビタミンなどの損失率も低く、長期保存できるメリットも。ただ、気をつけたいのが食中毒で、特に弁当に入れる場合は要注意。冷凍で菌の活動は抑えられるが、解凍して常温に戻すと復活する。市川教授は冷凍食品の活用を勧める。「特に国産の冷凍食品は厳しい衛生管理の下で作られ、もちろん急速冷凍されているので安全性は高いです。一食分で栄養バランスを考えた商品も増えています。冷凍食品を使うことは悪ではありませんよ」

夏の旬を封じ込めよ

 オクラや枝豆など傷みやすい夏野菜は、さっと塩ゆでして冷凍すると長く旬を味わうことができる。糖度の高い野菜や果物も冷凍に向いている。夏の甘い野菜といえばトウモロコシ。取れたてを冷凍し、ポタージュの材料にしているのが無農薬野菜を育てる「大坂農園」(藤枝市)の大坂俊広さんだ。「取れたてをすぐ食べていただくのが一番ですが、旬が短いトウモロコシは粒のまま冷凍すると便利ですよ」と教えてくれた。
 トウモロコシは日が出て光合成が始まると糖度が落ちるため、午前4~5時に収穫を済ませる。収穫した瞬間から味が落ち始めると言われるほど、食べ頃が短い。大坂さんは、その日のうちにゆで、芯から粒をばらしてジッパー付きの袋に広げて冷凍する。調理する時は少量の湯で解かしてミキサーでつぶし、牛乳や豆乳を加えて火にかけ、コンソメと塩で味を整える。冷凍の粒を散らせばごちそうスープの出来上がり。大坂さんが金、土曜限定で開くカフェ「やさいごよみ」(藤枝市・蓮華寺池公園内)でも8月の定番メニューとして登場する。「旬は冷凍で封じ込められます。地元の新鮮な農産物をおいしいまま食べられるので、食生活がもっと豊かになりますよ」

取材協力 / 三菱電機静岡製作所 静岡県立大学 大坂農園

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