特集 | 2017.12月号

アステン特集

クリスマスには小さな明かりで。

色とりどりの光が溢れる街から家に帰ったら、いつもの便利照明はオフにしておこうか。騒々しい日常は闇にしまって大切なものだけ見つめて過ごす、小さな明かりのクリスマス。

灯火に包まれる空間

 キャンドルの魅力の一つは「見せたくないところが隠れること」と、キャンドルアーティスト「NIMAME CANDLE」のスズキヒロキさんは話す。いつもの電灯を切って小さなキャンドルに火を灯すだけで、ごちゃごちゃした日常が影を潜め、いつもと違う異空間が生まれる。
 ゆらゆら揺らめく火のぬくもりにひかれてキャンドル作りをするようになったというスズキさん。もっと多くの人に楽しんでもらいたいと、ライブやディナーなどのイベント空間をキャンドルの光で満たす活動を6年前から続けている。「作るのも飾るのも楽しいし、『癒やされました』と喜んでもらえるのもうれしいんです」
 この日も、手のひら大の球形のキャンドルを天井からランダムな高さにいくつもつり下げ、室内を幻想的な光の空間に仕立てていた。「添加物を抑えて作ったキャンドルは透明感が出るので、火元だけでなくキャンドル全体が明るく光って、下から見上げてもきれいなんです」。独特の温かい色みは手作りならでは。
 人が集まるテーブル回りには、たくさんのキャンドルを花束のように1カ所にまとめて置く。テーブルに着いてその光を眺めていると、空中に散りばめるようにつったキャンドルもちらちらと視界の隅に入る。「見えていないようで見えているという位置にもいくつか置くと、空間がきれいに見えますよ」
 家で過ごすクリスマスなら、キャンドルの数はそんなに多くなくていい。「特に恋人と過ごす時は明るくしすぎないのがいいですね。顔が見えにくいくらいの方が距離は縮まりますから」
 よくあるパラフィン製のキャンドルと違い、大豆からできるソイワックス製のキャンドルはすすが少なく、香りとの相性も良いそう。火をつけてちょっと溶けたところにアロマオイルを垂らし、お気に入りの香りを楽しんでも。

ランプのもとに集まる時間

 火が放つ光の心地よさは、男性の方がよく知っているのかもしれない。オイルランプの専門店「すんぷらんぷ」の三好貴浩さんもその一人。アウトドアでオイルランタンの温かい光を知ったのが、火と付き合い始めるきっかけだった。
 「大型のランタンの中には、鍋を載せて温められる形のものもあるんです。火を囲んでチーズフォンデュをしたり、熱かんを楽しんだり。でも、僕には炎そのものがつまみになるんですよ。心地よい『1/f揺らぎ』の炎を見ているだけで十分お酒が楽しめます(笑)」
 アウトドアでは別の明かりで虫を集めておいて、ランタンの心地よい炎の明かりを楽しむのだとか。
 クリスマスの静かな部屋で火の明かりを楽しむには、オイルランプ。一つの炎が照らし出す範囲が、家族の集まる場所になる。「炎の前だと普段の生活ではしない話ができたりしますよね」
 長く安定した火を楽しめるのがランプの良さだ。「ランプの明るさは芯の太さで決まります。手の中に収まる小さなランプもあるので、好きなグラスに入れて透けて見える光を楽しんでもいいし、キャンドルを組み合わせて飾ってもいいですね」と三好さん。「カラフルな色のオイルを混ぜて好みの色にすると、ランプの雰囲気も変えられます」
 オール電化の家も増えている昨今、子どもたちが火に触れる機会も少なくなって、火が熱いことを知らない子までいるのだとか。「火って人には絶対に欠かせないものなのにね」

小さな明かりを楽しむDNA

 「部屋の明かりを変えてみるだけで、部屋の模様替えができます」と話すのは、照明デザイナー「TOMOSU.D」のふじたともこさん。「最近のLED照明は、明るさだけでなく、光の色もクールな寒色系から落ち着いた暖色系まで自在に調節できます。同じ空間をスイッチ一つでがらりと変えられると楽しさが広がりますね」
 照明デザイナーとして新宿のイルミネーションを手掛けた経験も持つふじたさんの自宅リビングは、シックなシャンデリアやクリスマスツリーが黒い壁に映えて、洞窟のように居心地良い空間だ。天井から全部をまんべんなく照らすシーリングライトはない代わり、間接照明やシャンデリアを配し、手元のコントローラーで調光や調色をして、表情豊かな柔らかい明かりを楽しむ。
 「ディナーでワインを飲む時は、グラスに反射する光を楽しめるようにシャンデリアの光を強めに、日本酒をおちょこで楽しむなら全体的に暗めが似合います」。料理をおいしく見せるには昔ながらの白熱球がいいのだとか。「白熱球って、フィラメントが燃えることで光る、自然の光ですから」。LEDと比べて寿命が短い白熱球も、調光して光量を90%に落とすだけで2倍長持ちし、省エネにもなるという。
 「戦後の日本は長い間『明るいことは豊かだ』という風潮が続いて、上から降り注ぐ効率的な光に慣れてしまっているけれど、その昔は日本人だってちょうちんの明かりで過ごしていたんです。暗がりの中の明かりを好むDNAはまだ残っているはず」とふじたさん。例えば天井照明を消して、テレビの裏に小さなLEDライトをつけるだけでも、昼間の部屋とは全く違った表情になる。
 クリスマスツリーの飾り付けも、チカチカ点滅する電飾をあえて使わないのがふじたさん流。「だって電飾が光るとせっかくのオーナメントが陰になるじゃないですか」。キラキラと光を反射するオーナメントやガーランドを飾って、上からスポットライトで照らすと、とたんにドラマチックになる。「丸の内のイルミネーションがシャンパンゴールドで統一されているように、光にテーマを持たせるときれいですよ。家で楽しむツリーなら、オレンジ系の光が落ち着いていておすすめです」。クリスマスの夜が楽しみになってきた。
 ちなみに、島田駅前などで展開中の参加型イルミネーション「シマダテラス」にもふじたさんが参画。地元の子どもたちが作った「ヒンメリ」と呼ばれる北欧の飾りを約1000個もつるし、下から照らしてきらめかせる、手作りの光空間がすてき。温かみのある光が駅に降り立つ人を「おかえり」と出迎えている。

取材・撮影協力 / 第一建設(株)藤枝支店 HIDAMARI flower&green 丸山研二郎様

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