特集 | 2018.4月号

アステン特集

お掃除うらら

江戸時代、大掃除が終わると人々は胴上げをしていたらしい。それくらい、掃除には人をご機嫌にさせる力があるのかもしれない。新年度がスタートしたばかりの今、あらゆる角度から掃除のカタチを見直すご提案。

春は掃除のベストシーズン

 大掃除といえば寒い年末のイメージがあるけれど、欧米では「スプリング・クリーニング」という言葉があるほど、春がベストシーズンとされている。梅雨入り前の大掃除は、日本の気候にも向いている。
 「梅雨に備えて水回りやエアコンのカビを取り除いておくと、夏にかけて快適に過ごせます」と話すのはハウスクリーニングを手掛ける「アート美匠」(焼津市)の髙橋昌実さん。「冬の間にたまった砂ぼこりや土ぼこりを払ったり、窓に付着した花粉やチリを洗い流したりするにも、春の大掃除はおすすめです」と話す。真冬とは違って、ぽかぽかした日の水仕事は気分も上がる。「春を楽しみながらお掃除すると、よりきれいになりますよ」
 寒く慌ただしい師走とは違って、春はのんびり掃除を進めるのもいい。今週はこっち、来週はあっちといった具合に。お気に入りの音楽でもかけながら磨いていると、心の疲れも春風に乗って飛んでいきそうだ。
 高価な道具は使わなくても、大切なのは"きれいになあれ"という真心。アート美匠ではスタッフそれぞれが、こだわりを持った掃除方法で磨き上げる。あるスタッフはステンレスのシンクの水あかを竹の割りばしを使って落とし、三つ編みに編んだストッキングでピカピカに磨き上げる。高橋さんは網戸のほこり取りには洗車ブラシを活用し、窓はゴムの付いたT字のスクイージーでクリアに仕上げる。
 高橋さんは社名の通り、掃除をアートと捉える。「特殊な道具を使わなくても、自分の技術でどこまで美しく仕上げられるか。そこは絵を描いたりする芸術と同じだと思うんです。そう考えるとモチベーションも上がります」。お掃除が創作活動のようでわくわくしてくる。

シンプル is ベスト、というコツ

  隙間のほこりを取る「ほこりんぼう!」は、島田市の「イトー」が開発したお掃除グッズ。真っすぐなヒノキの棒にパイルという極細の短い繊維を付着させたシンプルな造りだが、面白いほどほこりが取れる。
 元々、糸の製造過程で出る綿ぼこりを取る用具を製造していたが、紡績業の低迷を受け、工場向けの製品を家庭向けのお掃除棒に変身させて販売した。届きそうで届かなかった洗濯機や冷蔵庫の下、掃除機の中などニッチな場所のほこりがごっそり取れる。小さな会社が生んだお掃除棒は、瞬く間に全国的なヒット商品となった。開発した伊藤正一さんは「静電気をかけて繊維を直角に付けているので、綿ぼこりが絡みやすいんです。プロユースから生まれた技術の結晶です」と胸を張る。
 お菓子のようなカラフルな棒は12色。「これを使って、休みの日に家族みんなでお掃除を楽しんでもらいたい」と伊藤さん。ほうきやちり取り同様、シンプルな道具ほど使いやすく、長いお付き合いができるものだ。
 日々の掃除を楽にするには、シンプルな暮らし方や選び方も心掛けるといい。アート美匠の髙橋さんは「お掃除が苦手な人ほど、シンプルに暮らした方がいいんです」と話す。暮らしの中には、かえって手間を増やしている習慣がある。キッチンマットやトイレマット、脱衣所の足ふきマットもその一つ。交換や洗濯の手間がかかるわりに、汚れや臭いの原因となっていることがよくあるらしい。「マットやカバーがない方が清潔を保てているケースは多い」とは現場を知るプロならではのアドバイスだ。
 インテリアもシンプルなほど、掃除はしやすい。さらに換気扇やエアコンの機能も「特別な機能が付いていない単純なものほど、クリーニングが楽」という。つまるところ、シンプルisベスト、なのだ。

プロに委ねて、自分をねぎらう

 掃除は、ほどほどの日々の積み重ねが必要だ。とはいえ、忙しくて後回しになってしまうこともしばしば。そうなると、心にまでほこりが積もったかのようになんだか気が晴れない。そう感じたなら、掃除のプロに委ねてみるのもいい。
 汚れをまるごとリセットすれば、その後の掃除だって楽になる。例えば浴室。目に見えるところを掃除しても、浴槽の側面「エプロン」の内側はカビだらけ。なかなかそこまで念入りに自分で掃除する人はいない。天井や排水管など、手が届かないところにカビは潜んでいる。換気扇や洗面所、外壁も一度汚れをリセットしてもらえば一安心。ピカピカのわが家の湯舟に漬かりながら、頑張る自分をねぎらうのも悪くない。
 ここ数年、お掃除や家事を業者に依頼するという考えが、徐々に広がってきた。静岡市内で家事代行とハウスクリーニングを手掛ける「Concierge」(静岡市駿河区)の山田剛士さんは、子育て中の女性からの依頼が増えたと実感する。「シニア層の需要の方が多いと予想していましたが、共働きで小さいお子さんを育てている核家族世帯からの依頼が増えています。おうちサロンを営む方からの依頼も増えました」
 テレビなどの影響で問い合わせが増え、以前の約3倍の利用者数になった。エアコンや水回りといったスポット掃除だけでなく、部屋の掃除、雑巾がけ、おかずの作り置きといった家事代行サービスも需要がある。
 「核家族で共働きという環境で、ゆとりを持って暮らせている人は少ないです。でも土日を掃除に費やすのはもったいない。平日にこういうサービスを利用して、きれいな部屋で週末を迎えられれば、お母さんのストレスも減るだろうし、家族で過ごす時間も増えると思います」
 静岡市に住む有香さんは、共働きで2歳と5歳の男の子を子育て中。月2回、家の掃除をConciergeに依頼している。自宅で子ども向け英会話教室を営んでいることもあり、掃除を怠るわけにはいかない。生徒が増える一方で掃除にも時間を取られ、葛藤が続いていた。
 「限りある時間の中で、いかに効率的に仕事をするかと考えた時、掃除をプロに頼むことで、仕事時間が確保できると気付きました。それから夫と家事分担のことでもめることもなくなりましたね」と笑顔で話す。
 有香さんは自身の海外交流の経験から、日本の女性は負担が大きすぎると考える。「当たり前に家事サービスを利用している国もあるけれど、日本ではまだまだ浸透していません。日本は家事や子育ては妻の仕事という文化がまだ根強いですが、社会全体の考え方を変えないと、お母さんたちがパンクしてしまう」

日々の掃除はシンプルに、大変なことはプロに任せる。新しい価値観で見渡せば、きっと心の空も晴れるはず。うららかな春はお掃除日和。暮らしまるごときれいになあれ。

取材・撮影協力 / アート美匠 イトー Concierge

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