特集 | 2018.12月号

アステン特集

ボルドーに染まるクリスマス

毎年やってくるクリスマス。特別なひと時のために買い集めたオーナメントと一年に一度の再会をする。それだけでもわくわくするけれど、今年はそこにボルドーの魔法をかけてみよう。大人色に染まった至福の空間。過ごし方まで変わってきそう。

熟成されたワインのように

 紫でもない、えんじでもない。地味でもない、派手でもない。大人の渋さと華やかさを併せ持つボルドー。ワインレッドより暗く茶色がかった色は、フランスの銘醸地ボルドー産の赤ワインに由来する。
 ブルゴーニュと並ぶフランスワインの代表格で、「ワインの女王」と称される。「2009年のボルドーは当たり年って言われているんです」とピカピカのグラスに色の濃いワインを注いでくれたのは、藤枝市駅前のワインショップ「エピスリー芒種」のオーナーでソムリエの杉山有子さん。「グラスを傾けてみてください。深い赤みが少しオレンジがかっているでしょう。それが熟成されたボルドーワインの色です」
 フランスに"ワインと女は年を取るほど味が出る"ということわざがある。「ワインって人と似ているんですよね。穏やかに年を重ねると角が取れて丸くなる。人生と重ねながら飲むのもまた、大人ならではの楽しみ方です」
 クリスマスに誰かを招くなら、とっておきのワインに合う極上チーズも用意しておきたい。杉山さんが冬のパーティーにおすすめするチーズは、スプーンですくって食べるとろとろのフランス産「モン・ドール」。スライスしたリンゴやバゲットにのせるだけで、立派なおもてなしの一品になる。寒い時季しか出回らないチーズで、熟成したボルドーや豊満な白ワインによく合うという。「いいワインは人が集まるツールになります。熟成感のある人と、夕暮れ時から乾杯するクリスマスもいいですね」。芳醇なワインほど余韻は長い。その感動を仲間と共感するクリスマスは、きっと記憶に残るに違いない。

高貴なバラを引き立てる色

 ボルドーは、女性の魅力を引き出す不思議な色だ。グレーやベージュ、カーキといったシンプルな色を引き立てる一方、主役級の派手色を落ち着かせる効果もある。カジュアルにもフォーマルにも合う大人ファッションの救世主的存在だ。
 クリスマスを彩るインテリアも、ボルドーの魔法がかかると一気に大人テイストに変わる。静岡市葵区人宿町の生花店「TEN ROSEs」代表の河西和也さんがおすすめするのは、ボルドーをあしらったクリスマスのアレンジメント。定番は鮮やかな赤と緑でまとめがちだが、真紅の気高いバラにボルドー色のチョコレートコスモスを合わせて意表を突く。「主役クラスの赤いローズには白を合わせたくなるところですが、あえてボルドーでしずめます。高貴なローズの格を、さらに引き上げてくれるのがボルドーです」
 金銀の飾りは入れず、松ぼっくりやシナモンといった茶系で全体を調和させる。つや感のあるグリーンは使わず、トーンが控えめでマットなコニファーやユーカリを添えてシックにまとめる。テーブルに置くだけで、落ち着いた空間が広がる。
 クリスマスに合わせてドライフラワーをこしらえるのもいい。2週間前から赤いバラを逆さにして吊るして干しておくと、クリスマスにはビンテージ感のあるボルドーに変色する。シンボル的存在であるツリーは、シンプルなオーナメントや電飾でしっとりまとめる。リースは色を多用せず、ワンポイントのアクセントに留めるといい。「トーンを抑えたシックな色にまとめると、大人っぽいクリスマスになります」

クリスマスは黒いクロスで

 訪問客を異空間に誘いたいなら、テーブルコーディネートにもボルドーの魔法をかけたい。おもてなしサロン「STYLE SAISONS」(浜松市)を主宰するたかとりちひろ先生が、"ボルドーなクリスマス"をテーマに選んだメインカラーはブラック。テーブルクロスやプレートをブラックにして全体を落ち着かせ、ボルドーのナプキンを投入して差し色を際立たせる。「大人っぽく演出しようとすると、ボルドーに近い色をメインに選んでしまいがちですが、赤ワインを楽しみたい時は、同系色をあえて避けます」
 手軽に雰囲気を変えたいなら、まずは面積の大きいクロスから決める。クロスを広げると、大胆に空間のイメージが変わる。昨年は、タータンチェックや白のクロスで、全く違ったクリスマスを過ごしたという。たかとり先生は40~50枚のクロスをさまざまなシーンに合わせて使い分けている。
 クロスの次に用意したいアイテムは、ディナープレートを重ねる大きな皿「チャージャープレート」。いつもの料理のグレードが上がる魔法のようなアイテム。さらに余裕があればテーブルの中央に帯状のテーブルランナーを掛けてみる。今回のたかとり先生のセレクトはキラキラしたシルバー。細さと輝きでクリスマス感を昇華させている。代わりに太めのリボンを敷いても華やかになるという。ナプキンは濃い色を差し色に使うのがおすすめ。ナプキンリングがなくても、リボンで結ぶだけでかわいらしくなる。テーブルの上に、ブラックやシルバーのアレンジメントやフィギュア、キャンドルをさりげなく飾れば、いつもの食卓が隠れ家レストランのようになる。ただし、華美になり過ぎない装飾が大人クリスマスの鉄則だ。
 たかとり先生のサロンには、レコードのアナログ音が響いていた。BGMも空間を彩る大切なアイテムの一つ。定番のクリスマスソングもいいけれど、ボサノバやビートルズをかけることが多いという。レコードが奏でる少しくすんだ音は味わい深く、ワインな夜を心地よく酔わせてくれる。
 あえて定番を外したボルドーなクリスマス。それは大人の余裕や余白、余韻を楽しむ感性が研ぎ澄まされる空間になる。香り立つようなクリスマスに、乾杯。

取材・撮影協力 / エピスリー芒種 TEN ROSEs STYLE SAISONS ファイヤーライフ静岡

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