特集 | 2016.8月号

アステン特集

赤い糸の結び方。

この頃結婚していない人が増えているってことは、結婚したい人がお相手を見つけるチャンス、かも。自力で運命をたぐり寄せたカップルが相手に「この人だ」と思わせたものって、何?

会わないと始まらない

 「好きでもない男性とは気楽に話せるんだけど」というおおらかキャラのA子さんが30歳で婚活を始めた理由は「本当に好きな人ができた時にちゃんと接することができるように」。好きな人の前ではシャイになってしまう自分を何とかしたくて、頼りにしたのは結婚相談所だった。「コミュニケーション力を磨く習い事のようなつもりでした。他にやりたい趣味もないし」という、なかなかの手ぶら感覚で。
 希望の条件を満たす相手を検索したものの、「自分に合うかどうかは会ってみないと分からない」と、あまりプロフィールを深読みすることなく2人の男性と会ってみた。そのまっすぐな行動がミラクルを引き寄せたらしい。3人目で、A子さんは思いがけず恋に落ちてしまった。「お見合いの日に大遅刻してしまって、焦って駆け付けた私に、彼が『ケーキでも食べて落ち着きませんか』と言ったんです。それがすごくキラキラして見えて」。なんだかドラマみたいだ。

予想外のことが起こる毎日

 A子さんのお相手、B男さんは六つ年上。36歳バツイチというプロフィールのせいか、結婚相談所で探しても会ってくれる女性は多くなかったが、「会ってもらえたらチャンスはある」と冷静に自分を分析していた。「ここまで来たら、妥協せず普通に恋愛できる相手を見つけたい。そうでなければこのまま結婚しなくてもいいと思っていました」とB男さんは振り返る。
 理想の女性のタイプは「自分が主導権を握りたいタイプなので、そっとついてくるような女性」。ところがA子さんは初対面からしてドタバタとにぎやか。「彼女はアンコントローラブル(制御不能)でした」と笑う。
 結婚相談所で知り合った人とは、会ってすぐに互いの結婚観について話せるのがいいところでもあるのだが、ハプニングから始まった二人の初デートは全く違っていた。「マンガの話とか趣味のこととか、自然と会話が弾んで単純に楽しかった。彼女には、何を話そうかと考える必要がなかったんです」とB男さん。A子さんの方は彼を意識するあまり結婚の話などとてもできなかったのだが、おかげで二人は自然と呼吸を合わせていくことができた。
 そうして何度か会ううちに、B男さんの理想像は思ってもみなかった方向に変わっていく。「快活で器の大きな彼女を知るにつれて、自分がコントロールできなくてもいい、彼女といれば何とかなると思うようになったんです」
 二人はこの夏、念願のウエディングベルを鳴らした。B男さんは言う。「独りでいるのは気楽だけど、狭い世界では磨かれない。彼女といるとそれだけで予想外のことが起こる。知らなかった交友関係も広がります」

自分とは違う人という前提

 婚活イベントで出会った彼女と晴れて結婚することになったC男さん、37歳。もともと海外旅行も独りで行けるタイプで結婚を焦っていたわけでもなかったけれど、自分のためというより「両親を早く安心させてやりたい」という気持ちはあった。彼女とはそんな家族思いの感覚がしっくり合致したという。「彼女がお父さんの話をするのを聞いて、家族に大事に育てられてきた人なんだなと感じました。彼女も自分も、結婚後はどちらの親も大事にしたいと考えていた。結婚が決まった今は、彼女のご両親ともすごく仲良くしています」
 ただ、元来かわいらしくて従順なタイプが好みというC男さんにとって、自分の意志をはっきり主張する自立した彼女は、少々思惑と違っていた。「食事する店なんかも譲らない。最初はそれがショックだったけれど(笑)」とC男さん。「でもこれは結婚を前提に始まった付き合い。好きな人と結婚するというより、結婚する人をだんだん好きになって受け入れていくという感じでした。『好き』から始まった人と結婚すれば、全部自分と同じではないのが許せなくなるかもしれない。でも彼女となら、お互いに違う人だという認識から始めて、共有できる点を探そうと思えました」
 これが10歳若かったらやはり価値観の一致にこだわったかもしれない、とC男さん。「運命の人はこの人しかいない」なんて灼熱の恋とは違う、自然な流れの延長線上に結婚はあった。

自分の持つ価値を整理してみる

 「男性の方が結婚について冷静に考えていますね。女性は自己評価が高くなりがちです」と話すのは結婚相談所「エンマレッジ」の石上由実子さん。ずばり斬り込む的確なアドバイスで20代から70代まで多くの会員に信頼され、年間43組ものカップルを成婚に導いてきた。「20代の若い方もよく相談に来ますね。モテないから相談するというより、大勢の婚活パーティーや合コンが苦手だとか、相談できる相手が欲しいという人が増えています」
 石上さんは相談者に徹底した自己分析を促す。「自分がどんな人と結婚したいのか、その人に自分はどんな価値が提供できるのかを整理してみるんです。理想の相手の条件はたくさん言えるのに、自分の『売り』を言えない人は多いですね。自己分析ができたら、理想の条件が自分の価値と釣り合うのか、いろいろな方とお会いしながら検証していくんです」
 実際に成婚するカップルは、最初の理想とは違った条件の組み合わせが多いのだとか。「婚活がうまくいくのは、素直な人。結婚はギブアンドテイクですから、アドバイスを素直に受け入れて行動を変えられる人は相手ともうまく折り合いがつけられます」
 B男さんC男さんにも、婚活で印象のいい女性について聞いてみた。「気持ちや考えを自分で伝えられる人。あと、最低限の常識は持っていてほしいですね」「自分磨きもいいけど、自分を大事にする以上に周りの人を思えるのも大事だと思います」

自治体の婚活イベント

 内閣府の調査によれば、いつかは結婚したいと考える20~30代の半数以上が「相手に巡り合わない」ために結婚してないとか。そこで多くの自治体が少子化対策の一環としてさまざまな結婚支援に取り組み始めている。
 例えば静岡市では、市の地域資源を活用したさまざまな婚活イベントを展開する「しずおかエンジェルプロジェクト」を推進中。楽しみながら婚活できる企画がいっぱいで毎回大人気だ。地元企業などと共催し、電車を貸し切りにしたイベントを行ったり、クッキングスタジオで料理教室を開いたり。多人数が苦手な人のために、年齢や趣味などを絞って行う少人数制のイベントも開催。参加者はイベントの最後に「もう一度会いたい人」を指名し合い、カップルに。結婚を意識した異性と知り合えるのが好評だ。
 静岡市ではここ2年余りで既に200組以上、平均して4人に1人はカップル成立となり、結婚するカップルも出てきた。自治体主催という安心感と、お互い「結婚相手」を探しに来ているという感覚が二人の距離感を縮めるのかも。

取材・撮影協力 /
エンマレッジ TEL.054-374-3229
This Is Cafe 静岡店 TEL.054-266-5500
エスプリ・ド・ナチュール TEL.054-284-2323
静岡市子ども未来局青少年育成課