asten PEOPLE | 2017.6月号

asten PEOPLE

長嶋万記

ボートレーサー

しぶきを上げてターンしつつ競り合いを演じるボートレース。なんと全国に200人を超える女性レーサーがいるのだそう。地元静岡支部所属の長嶋万記さんは、最上級のA1級で活躍する選手でありママでもある。

"誰かを笑顔にするためにできること。行動し始めてから強くなれた。"

Q.なぜボートレーサーになろうと思ったのでしょうか。

運動が大好きで、小学校ではサッカーやバレー、中学からはバスケットをやっていました。バスケ部の2年上に憧れの先輩がいました。現・愛知支部の大瀧明日香さんです。大瀧さんが高3になった時に「進路どうされるんですか?」と尋ねたら「私はボートレースを受けようと思う」と教えてくれて、私もピーンとくるものを感じたんです。大瀧さんからの手紙で厳しさについても知りましたが揺るがなかったですね。

Q.レース中はお子さんと会えず寂しいですね。

そうですね。この春、小学校に入学したので「大丈夫かな」と心配です。強くなればなるほどレースは増えるので、家にいられるのは1年のうち3分の1くらいじゃないでしょうか。

Q.母になってレースへの向き合い方は変わりましたか?

以前はオンとオフの切り替えが下手で、休みの間もボートのことを考えてしまうことが多かったんです。でも、お母さんになってからは切り替えをしなければならなくなったことで、逆に仕事ができるありがたさをより感じるようになりました。

Q.さまざまな福祉活動も展開されています。

選手になってから知的障害の子が通う学校を訪ねる機会があり、みんなの笑顔に逆に元気をもらいました。元プロ野球選手の赤星憲広さんが盗塁と同じ数の車いすを寄贈していたことを知って、私もあの子たちの笑顔のために何かできないかなと思ったのがきっかけです。1着を取った時の賞金の一部をためたり、グッズを販売したりして寄付をしています。この活動を始めてから何より変わったのは自分自身。成績が上がって、モチベーションになっています。続けていきたいし、広めていきたいです。

Q.ボートレースの特徴についても教えてください。

選手はまずレース場に入ったら、年末の福引と同じようにガラガラ抽選をして、その1節に使うエンジンとボートを引き当てます。エンジンはスポーツカーと軽自動車ぐらい差があることも。自分でメンテナンスをしてレースに臨むのが独特です。レース場によって塩分など水質の違いがあるので、この対応にはプロペラの調整などが関わってきます。スポーツ選手に憧れていたんですけど、どちらかといえば職人でしたね。

Q.勝敗の分かれ目はどんなところでしょう。

レースは6艇で600mのコースを3周して競います。ヨーイドンでスタートするのではなく、「大時計」の針に合わせて0から1秒以内にスタートゾーンを通過する方式です。すごく似ているな、と思っているものがあって、車で料金所のETCレーンを定められた速度でブレーキを踏まずに走り抜けるドキドキ。そっくりです。スタートは内側にいた方が有利ですが、外側の選手は助走をつけることが許されていて、何秒前にどこから動き出すかを逆算します。風やレバーの握り込みの感じで変わってくるのが難しいところです。スタート前から駆け引きは始まっていて、自分より外枠の先輩が内側に入ってくることも。スタートから1周目1マークの攻防が最も魅力ですね。

Q.アステン読者にメッセージをお願いします。

ボートレースはスポーツの中でも最も男女平等に戦える競技の一つだと思っているんです。働く女性にも通ずるものがあるのではと思います。ぜひ一度見に来てください!

PROFILE

1981年、御前崎市生まれ。常葉菊川高卒業後、2度目の挑戦でボートレーサー養成所試験を突破し、2002年デビュー。09年初優勝。同年、社会支援活動「マキプロジェクト」をスタートさせ、15年、活動発展のために一般社団法人ZEROを設立して代表理事を務める。

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