asten PEOPLE | 2020.8月号

asten PEOPLE

明日海りお

女優

愛する家族を守るため、男性と偽って兵士になり、国の命運をかけた闘いに挑む少女の物語を描いた映画「ムーラン」。ディズニー・アニメーションの傑作を実写化。ディズニー映画史上最強で唯一無二のヒロインの日本版声優は、静岡市出身で元宝塚歌劇団花組トップスターの明日海りおさんが務めました。昨年11月の退団後、初めての仕事を振り返りました。

"表現する場が変わっても私は私、変わらない。舞台でも声優でも演じることは楽しい"

Q.日本版声優でムーラン役に決まった時、どんな気持ちでしたか。

素直にうれしかったです。幼いころからディズニーのアニメーションを見ていましたし、世界観も好きで、ディズニーの最新情報が載った雑誌や、ディズニーの雑貨やインテリアのカタログを母に頼んで取り寄せてもらい、眺めていました。ディズニーランドでは空飛ぶダンボに何度も乗り、ここに住めないのかな、閉園の時に隠れていたら朝までいられるかな、と考えたこともありました。

Q.初めてのアフレコ、挑戦してどうでしたか。

私が聞きなじんでいるのは宝塚の女性の声なので、普通の女性はどこから声を出しているんだろう? と思い、ドラマに出ている女性の声を聴き、海外ドラマや映画の吹き替え版を見ました。当初は口を合わせることにとらわれ、緊張して焦ってしまいましたが、ムーランや演じている女優さんの心の動きを逃さず、一瞬一瞬に込めようと心掛けました。男役を長い間演じてきたので、自分が発する少女の声に聞き慣れず、本当にいいのかなと思ったり、女性役が気恥ずかしくなったり。男装したシーンでは張り切って立派な男性のような声になってしまったことも...。口の動きに合わせる集中力と、舞台と違って収録するタイミングで感情をリアルに声に乗せる瞬発力が必要ですね。

Q.発見はありましたか。

舞台とは違う表現方法があったんだと気づきました。今までは舞台での表現を深く掘ってきましたが、違う種類の穴があったのね、という感じです。加えて、穴を掘っていく作業は、畑が違っても面白いなと。演じることは、舞台であってもアフレコであっても、私にとってはやっぱり楽しいですね。

Q.偽りの自分と、本当の自分とで葛藤するムーランが下した決断をどう思いましたか。

迷った末にきちんと自分で道を切り開いていくのがムーランのすごさだと思います。本当の自分でいること、自分の生きる道は自分で決めることが最も力を発揮します。ムーランの自分で成長できる強さ、しなやかさがいいですね。目の前のことに納得しながら進んでいけば、自分らしい道になり、自分らしい所にたどり着くのではないでしょうか。

Q.宝塚退団後から初仕事までの間、どのように過ごしていましたか。

宝塚で自分の所属以外の組の舞台を見に行き、長年住んだ関西の家をひたすら片付けていました。ゆっくりしつつ、一つ一つ思い出を振り返るような感じでした。宝塚がすごく好きで、男役をしている時がすごく楽しかったので、辞めたらどうなるんだろう、無気力、ひきこもりになってしまうのではと不安でした。それが、やりきってみたら、宝塚を辞めても私は私なんだなと。体を動かすことや歌うことが好きな気持ちは変わらないし、寂しさに襲われるようなこともありませんでした。

Q.公開を前に、地元静岡をはじめ、全国のファンに一言!

待ってくれている人はもちろん、アニメーションファン、記事を読んで気になった人にもぜひ見てもらいたいし、映画館へ行く際は感染症予防対策を万全にして楽しんでほしいです!

PROFILE

静岡市出身。2003年、宝塚歌劇団に入団し、月組に配属。13年に花組に組替えし、14年にトップスターに就任した。「エリザベート」や「ポーの一族」「CASANOVA」などで主演し、高い歌唱力と演技力で不動の人気を集めた。15年に静岡市の観光親善大使に就任し、故郷の魅力発信にも努める。20年から研音所属。
※「ムーラン」は9月4日(金)から全国公開の予定でしたが、7月27日(月)に延期が発表されました。