asten PEOPLE | 2019.6月号

asten PEOPLE

末吉里花

エシカル協会代表理事
日本ユネスコ国内委員会広報大使

人や地球環境、社会に配慮した、思いやりある消費行動「エシカル消費」について広く伝えようとエシカル協会を設立し、エネルギッシュに飛び回っている末吉里花さん。今年で4回目となった駿河総合高校での特別授業の後で、取り組みや思いについて聞いた。

"作り手に思いを寄せることで、使い手にも愛が生まれる。"

Q.「エシカル消費」について深く学ぼうと思われたきっかけは?

14年ほど前、「ピープルツリー」というブランドの創設者サフィア・ミニーさんにお会いできたことです。それより前、雑誌「VOGUE JAPAN」を見ていたら、すごくすてきな白いワンピースが載っていたんです。それがピープルツリーのもので、調べたらフェアトレード(公平貿易)商品を専門とするブランドだと分かりました。その時、私は環境に関する活動をしていたのですが、サフィアさんとの出会いが、環境だけでなく人にも配慮したものづくりについて知る機会となりました。「ピープルツリー」の始まりにあったのは「ファッションで世界を変える」というサフィアさんの思い。私もファッションが好きだったので、好きなことを通じて世界を変えることができたら素晴らしいな、と感じたんです。エシカル消費は、フェアトレードも含む、さらに視野の広い考え方です。私自身、もっと幅広い視点に立って活動できたらと思い、徐々にシフトしていきました。

Q.エシカル消費の考え方は、この数年で急速に広まった印象があります。

国連加盟国が持続可能な開発目標SDGsを採択したことが大きいと思います。今ではメディアでも多く取り上げられ、企業、自治体、消費者センターなど多方面から講演の問い合わせをいただきます。特に学校からの依頼が多く、広がりを実感しています。

Q.学校での講演や授業で、うれしい反響はありましたか?

駿河総合高校では、フェアトレードを学んだ生徒からの発案で、アフリカのバナナ畑で廃棄されていた茎を活用する「バナナペーパー」が卒業証書に継続的に使われるようになりました。駿河総合の皆さんは行動に移すのも早かったので、このお話をいろいろな所で紹介しているんです。小学生からも「世界で起きていることを全然知らなかった。お話を聞いてから家族と買い物に行って、フェアトレードのマーク(認証ラベル)を探して買いました」といった感想をもらえることがあります。若い世代に伝えるのは、時間はかかるけれども確実。力を注いでいます。家族にも伝わるので、広がりも大きいですよね。

Q.世界の実情を知るおすすめのドキュメンタリーなどあれば教えてください。

「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~」という米国の映画があり、すでにDVDになっています。実はアパレル産業は、エネルギー産業に次いで地球にインパクトを与えている業界だと言われています。身近な物なのにその生産過程について私たちはほとんど知らない。決してファストファッションを否定するものではなく、企業がどのような取り組みをしているのか知ろう、企業に自分たちの思いを届けよう、と行動するきっかけとなる作品だと思います。

Q.授業で「エシカルな物にはストーリーがある」とお話しされていました。

ものづくりの現場を見に行くと、「これだけ愛と手間をかけて作っているのか。長く使い続けよう」とあらためて思います。作っている人にどれだけ思いを寄せることができるか、が物を選ぶ決め手になっていくと思います。認証の有無に関わらず、ストーリーがよく分かる物を購入することがエシカル消費。私は、近江商人の「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」に「作り手よし」「未来よし」をプラスした「五方よし」と捉えています。

Q.静岡とのご縁はありますか?

兄が寮のある静岡市の中学校に通っていたため親近感を抱いていました。鎌倉に住んでいて東海道線で気軽に来られるので、友達を訪ねたり、お魚を食べに来たりしていますよ(笑)。静岡の方はSDGsに隔たりを感じずに入り込める仕掛けづくりが上手。エシカル消費が、さらに一歩を踏み出す入り口となればと願っています。

PROFILE

慶應義塾大学総合政策学部卒。SBSテレビ「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。著書に「はじめてのエシカル」(山川出版社)ほか。東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事。