asten PEOPLE | 2019.9月号

asten PEOPLE

佐伯チズ

美肌顔師 衣食住生活アドバイザー

ファンデーションは塗っておらず日焼け止めだけ―と聞き、思わずため息。佐伯チズさんは76歳になった今もエネルギッシュに美肌術を伝えているが、その素肌こそが雄弁だった。シンポジウム「静岡暮らしは百薬の長」にパネリストとして参加した佐伯さんを訪ねた。

"お客さまが講師、経験が授業。今も『社会大学』在学中。"

Q.しみや吹き出物...鏡を見るのが嫌になってしまいます。

それは欠点しか見ていないから。鏡は最高のアドバイザーなんですよ。しみもたるみも吹き出物も、今できたのではなく長年の蓄積で出てくるの。体の中から「これ以上太陽に当たらないで」「食べたものがちゃんと吸収されていないよ」と信号を送ってくれているんです。食べる順番に気を付けたり、食べることで体の調子を整えたりして応えることが大事。それを触ったり化粧品ばかりに頼ったりするから残っちゃうの。

Q.美容において実は大切なのに、無関心にされがちなことは。

まずは食べることです。旬を食し、左右対称に噛むこと。そして、五感を常に意識して使うこと。旬の物の色や香り、歯応え...。脳が活性化されてホルモンの分泌が促されます。美容論は予防論。気を付けて先にしておけば「悩み」は生まれないんだけど、大体は癖がそれを作ってしまうの。次に、両手を使ってお手入れをすること。下がってくるのは当たり前。両手を使って引き上げる。最後に皆さんが一番苦手なのが、続けること。

Q.体の中と外はつながっているのですね。

上皮組織は「外臓」。私は「皮脳同根」とも言っています。ドキドキしたら顔色もピンクになるでしょ? 年齢も性別も関係なく、一人でも多くの方にキレイになって生き生きと暮らしてほしい。そうしたことを学べるカリキュラムを今作っているんです。介護美容・看護美容もその一つです。

Q.近年、ビジネスをめぐり苦境に陥られたそうですが。

10年間、信用して多くのことを任せていた人に裏切られてしまった。大切なお客さまの連絡先も失ってしまいました。半月は寝込みましたよ。腹も立ったし、情けなかった。でも、私のことを望んで待ってくださっているお客さまがいたから落ち込んでいられないと思えたんです。私はゲランに勤めていた頃にお客さまの借金を負ってしまったことがあり、病床の主人に「確かめずに裏書してしまったのはあなたのうかつさだよ。今後の経験にしていったらいいじゃない」と言われました。主人が生きていたら今回も同じことを言っただろう、と思ったり、父母に代わり育ててくれた祖父から「お金は欲だよ。お金のことをよく口にする人には気を付けなさい」と繰り返し言われたことも思い出したりしました。

Q.今、描いているものはありますか?

「美肌革命」の英語版を出した時に、南アフリカのお医者さまから「これなら貧しい女の子たちにもできる」と言っていただきました。海外では医師免許がないと美容を語れないようで、国家資格を持つ美容師がお金をかけずにきれいになる方法や衛生について説くことに関心を持っていただけた。私は13歳でオードリー・ヘップバーンに憧れて美容に目覚めたので、彼女の後半生のように、80歳からは海外で社会貢献をしたいと思っているんです。仕事のない女性のために何かできたらと考えています。

Q.静岡とのご縁はありますか?

パルファン・クリスチャン・ディオールに勤めていた頃、インターナショナル・トレーニング・マネジャーとして静岡伊勢丹や浜松の遠鉄百貨店に来ていたんですよ。静岡のお客さまから新茶やタマネギ、メロンなどおいしい物をたくさん教えていただきました。今でもお取り寄せを続けています。

PROFILE

1943年生まれ。外資系化粧品会社を定年退職後、エステティックサロン「サロン ドール マ・ボーテ」を開業。その後、美容理念と佐伯式美容理論を提供する「佐伯式美肌塾チャモロジースクール」を開校。著書は累計500万部を超える。「美肌革命」(講談社)は、英語、中国語、フランス語、ロシア語、ポーランド語など9ヵ国語に翻訳され、海外からも注目を集めている。