asten PEOPLE | 2021.3月号

asten PEOPLE

長尾 春花

バイオリニスト

掛川市出身のバイオリニスト長尾春花さん。ハンガリー国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターを務めるなど世界を舞台に活躍している。

"演奏会はエキサイティング 作曲家の思い、楽器で表現"

Q.印象に残っている公演はありますか。

演奏家という立場での気持ちを揺るがされた公演は少なくありません。勇気や希望を分かち合えるのが音楽だと信じてやってきました。それが2011年の東日本大震災後、演奏会の中止が相次ぎ、自信がなくなりバイオリンを辞めることまで考えました。ですが、震災後初めてのリサイタルで、私自身が音楽を通してエネルギーをもらっていることに改めて気付きました。18年には、米ニューヨークのカーネギーホールで、ハンガリー国立歌劇場管弦楽団とF.ヴァッキのバイオリン協奏曲を共演する機会に恵まれました。多くの巨匠との歴史を刻む舞台で演奏できた幸運に震えました。

Q.どんなところにやりがいを感じていますか。

作曲家が何を私たちと共有したいかを感じ取ることや、それをどう楽器を通して音楽として表現するかを探っていくことはとても興味深く、やりがいを感じる部分です。多彩な演奏家と共演することで音楽的な可能性は広がり、今しか起こり得ない世界として作曲家のメッセージを自身を通して空間に放ち、お客さまと共有できる演奏会は一番エキサイティングな瞬間です。

Q.昨年はコロナによってどのような影響がありましたか。

緊急事態宣言当日も公演があり、翌日から突然、中止になりました。ハンガリーのリスト音楽院で教え始めた最初の年でもありました。私にとって初めての門下生がそれぞれの思いと葛藤しつつ、オンラインレッスンという慣れない形で異常事態に果敢に挑む姿に勇気付けられました。基礎練習の徹底や語学の勉強に励むことができた上、今までなかなか持つことのできなかった自分とじっくり向き合う時間を得られたような気がします。

Q.ふるさと掛川市への思いは。

訪れるたびに少しずつ変化していく様子を目の当たりにする一方、昔と同じお店が営業している喜びもあり、いつもとても暖かな気持ちになります。支えてくださる方々と再会し、そこで新たな出会いがあったり...。変わらないホームに感謝します。

Q.3月11日に静岡音楽館AOIで開かれるチャリティコンサートへの意気込みを聞かせてください。

今年は東日本大震災から10年。アイワグループが毎年開く復興チャリティコンサートも10年目となり、節目に演奏させていただけることを重大に感じています。指揮の大山平一郎先生と静岡フィルハーモニー管弦楽団の皆さまとご一緒できることをとても楽しみにしています。コロナ禍の厳しい状況の中ですが、鎮魂と未来への希望を音に込めて届けられる貴重な瞬間を心待ちにしています。

PROFILE

東京芸術大学、同大学院修士課程を首席で卒業し、同博士課程を修了、博士号取得。リスト音楽院ヴィオラ科修士課程を首席で修了。日本音楽コンクール第1位。ロン=ティボー国際音楽コンクール、仙台国際音楽コンクールなどで入賞。静岡県文化奨励賞受賞。カール・フレッシュ国際コンクールにて、第1位、優れたモーツァルトの演奏に贈られる特別賞を受賞。2018年、NYカーネギーホールにて、F.ヴァッキのヴァイオリン協奏曲を演奏。ハンガリー国立歌劇場管弦楽団コンサートマスター、リスト音楽院で教鞭を執る。

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