asten PEOPLE | 2019.12月号

asten PEOPLE

依田邦代

編集者、グレイヘアプロデューサー

昨年度の流行語大賞にもノミネートされた「グレイヘア」。おしゃれなシニア女性にフォーカスした書籍『グレイヘアという選択』は、幅広い世代に、こんなに美しい年の重ね方があるのかと勇気を与えた。「グレイヘアは生き方」と語る編集者の依田邦代さんに、グレイヘアを選ぶ意味について話を聞いた。

"グレイヘアの選択は、ありのままの自分を肯定すること。白髪は、新しい自分にシフトするサインです。"

Q.グレイヘアを世に送り出したきっかけは?

街で見つけたおしゃれなシニア女性の写真を集めた『OVER60 Street Snap』(主婦の友社)という本を50代のときに手掛けました。好評だったので第2弾、パリ版、ミラノ版と計4冊出しましたが、それらに登場する多くの女性が白髪だと気付いたんです。私自身、白髪染めが苦痛で、3週間に1回の白髪染めを一生続けるのかと考えて目の前が真っ暗になったのですが、いざやめるとなると、老けて見えるんじゃないかと不安でした。それなら「白髪は染めて当たり前」という風潮を変えるしかない、そんな本を作りたいと思ったのがきっかけです。白髪のおしゃれな女性たちを見て、こんなにすてきなら白髪染めをやめてもいいと思う人が増えるかも、と考えたのです。

Q.確かに、いざ染めないとなると勇気がいりそうです。

今年、主婦の友社で221人を対象にグレイヘアの意識調査をしました。いつ白髪染めをやめたいかという質問に約95%が「時期をみてやめたい」と答えています。今すぐやめられない理由は「周囲の目が気になる」「早すぎる気がする」など。「老けて見えるかも」「移行期はどうすればいい?」と約7割の人が不安を抱えています。一方で、実際に白髪染めをやめた人に理由を聞くと「グレイヘアがおしゃれだと思ったから」という回答が半数近くに上りました。これは、従来の白髪のイメージと違ってグレイヘアがおしゃれだという認識ができたからでしょう。やめてよかったと答えた人は96.6%。「頻繁に染めるストレスから解放された」という答えが一番多かったのが印象的でした。

Q.ご自身もグレイヘアにされましたが、いかがですか。

染める回数が増えるとともに、白髪染めの薬剤にかぶれるようになったんです。私はやめて2年ですが、中途半端に白髪が伸びかけの頃が一番ストレスが大きく、ヘアアレンジをしたり、帽子やスカーフを利用したりして乗り切りました。グレイヘアに合わせて、明るい赤の口紅を付けたり、赤いイヤリングやスカーフ、眼鏡など、小物にきれいな色を取り入れるのが楽しくなりました。私はグレイヘアをきっかけにピアスを開けたんですが、大胆なデザインを思い切って選べるのも魅力です。着物も似合うんですよ。

Q.「グレイヘアは生き方」。しなやかで強い意思を感じます。

白髪染めをやめると決めるとき「自分の髪の色でこれからどう生きたいか」をイメージすると思うんです。何もしないと体は年を取る一方ですが、そんな自分をありのまま肯定して受け入れる。でもあきらめるのではなく、おしゃれをしよう、背筋を伸ばそう、口紅を塗ろう。そんなふうに覚悟し、努力しようと決心する。グレイヘアはこれからすてきな大人へシフトするサインのような気がするんです。

Q.グレイヘアを目指す人へアドバイスをお願いします。

グレイヘアにするのは大変じゃない?と言われますが、大事なのは「自信を持つこと」。老けて見えるかもという不安を振り払って「絶対似合う。明るい洋服を着ているし、背筋を伸ばしている。すてきに見えないはずがない!」そんな気持ちで人前に出てほしいですね。女性は仕事や家事、子育て、介護などさまざまな役割で頑張ってきた人がほとんどです。見た目は若い人にはかなわないけれど、中身はとても大切なものが積み重なっているはず。白髪が生え始めたら母親らしく、嫁らしく、主婦らしくといった枠を外し、自分に優しくしていい。好きな服を着、きれいな色を身に付けて、おしゃれを楽しんでください。

PROFILE

1958年生まれ。お茶の水女子大卒業後、1981年主婦の友社入社。雑誌編集長などを経て書籍編集者に。シニア女性のライフスタイルにフォーカスした『グレイヘアという選択』『グレイヘアという生き方』『古布を着る。』(いずれも主婦の友社)ほか、数々のヒット作を手掛け、定年退職後はフリーランス編集者として活動中。2018年に孫が誕生。