医療、産業で活用　近年は「核医学治療」も

放射線は医療現場で利用されているほか、産業でも活用されています。たくさんの水分を吸収する紙おむつの材料や、高品質な自動車のタイヤを作る際にも放射線の力を利用しています。


岡田　最近ではくっつきやすく、剝がれやすい、皮膚を再生するばんそうこうの製品開発にも利用されています。
長谷川　肌に直接触れるものにも放射線の力が使われているんですね？ 岡田　放射線を産業で活用する際は、材料や製品を作る時に放射線の力を利用するだけで、出来上がった製品から放射線が出るわけではありません。安心して使ってください。
長谷川　比較的新しい治療法として、核医学治療があるとラジオ番組で岡田先生がおっしゃっていましたね。
岡田　薬の中に放射線を出す元素を入れ、がん細胞の近くから放射線治療を行うものです。
山本　直接体内に放射性物質を入れて治療するというのは初めて知りました。驚きです。

正しい知識を身に付け、判断することが大切

日本では自然界から１年間に平均2.1mSv（ミリシーベルト）の放射線を受けています。これは健康への影響を心配する必要のないレベルです。実は自然界からの放射線の中では、食べ物から受ける放射線量が最も多く、1年間の平均で0.99mSvとされています。


山本　お茶や魚など、食べ物には放射性物質のカリウム40が含まれていると聞きましたが、毎日摂取しても大丈夫なのでしょうか？
岡田　カリウムは人間にとって必要不可欠な栄養素で、ほぼ一定の割合で体の中に保たれます。体に必要な栄養素をしっかり摂るためにも、さまざまな食材をバランスよく食べることが大切です。
小泉　ちゃんとした知識があれば、むやみに怖がらなくていいんですね。今日学んだことを家族や友達に伝えたいです。
杉山　私も放射線の話を周囲に伝えていきたいです。
岡田　大事なのは正しく恐れること。放射線量が増えれば危険ですので専門家や技術者には適正利用を求めつつ、自分自身も正しい知識を身に付けて判断してほしいですね。

※Sv（シーベルト）は、人が放射線を受けた時、人体にどのくらいの影響が出るのかを表す単位。1Sv=1,000mSv。

放射線セミナー講師・プロフィール

岡田往子（ゆきこ）さん
東京都市大学理工学部原子力研究所客員教授。原子力委員会委員（非常勤）。日本大学農獣医学部水産学科卒業。千葉大学博士（理学）修得。高純度材料や考古学資料の微量元素の分析や福島支援（20㎞圏内の放射性物質測定、放射線教育など）、赤城大沼湖水の放射性物質の測定にも力を注いでいる。

協賛　静岡エネルギー・環境懇談会　https://www.enekan-shizuoka.org/